風俗ライターを始めて約20年。
これまでにさまざまな突発イベントに遭遇しています。
そこにはラッキースケベ、出会いと別れ、感動などがありました。
でもやっぱり印象的なのは恐怖。
そこで今回は天国から地獄へ突き落とされたエピソードをご紹介しましょう。
お楽しみください！
【第1章】編集長から取材の指示
それは2010年前後の夏。
当時の僕は新宿にある某風俗雑誌の編集部に在籍していました。
10時ごろに出社すると僕に指示を出す編集長。
「今日の13時から取材に行ってもらえるかな？」
とにかくディープな世界が大好きだった僕は怖いもの無し。
特に取材は直接ヒリつく体験ができるので率先して引き受けていました。
「じゃあ、13時に歌舞伎のアマンド前に行ってよ」
【第2章】歌舞伎町アマンドに現れた3人
アマンドとは歌舞伎町にあった喫茶店で、怪しい打ち合わせや勧誘の定番スポット。
ヒリつく気持ちを抑えながら向かいました。
そしてガラス張りの店先で15分ほど待っていると、明らかにその筋と思われる3人組がやって来ます。
センターにいるのはグレーのスーツを着た、白髪短髪の60歳前後の男性。
身長は160センチほどで小柄ですが眼光は鋭く、明らかに3人組のトップと思われます。
どこか麻生太郎のような雰囲気があるので“麻生さん”と呼びましょう。
麻生さんの右には細身の体系で薄いサングラスをかけた50歳前後の男性。
おでこは広めですが小顔でスラリと長い脚が印象的で、若い頃は相当なイケメンだったと思われます。
大杉漣に似ていたので、ここでは“大杉さん”と呼びます。
そして最後は180センチオーバーで体重は100キロオーバーと思われる大男。
20代前半で短髪角刈り。
昭和の悪役レスラーのような風貌なので、“レスラー”と呼びましょう。
【第3章】時すでに遅し！逃げられない！
「風俗雑誌の人だよね？ 待たせてごめんね」
ギョロッとした目で見ながら僕に声をかける麻生さん。
本能的に「この人、絶対に怖い人だ……」と察知する僕。
でもこのヒリつく感覚にゾクゾクもしていました。
「ひとまず店に入ろうか」
麻生さんが言うやいなやダッシュしてアマンドのドアを開けるレスラー。
「どうぞお入りください」
レスラーが僕を誘導するではありませんか。これはむしろビビってしまう……。
「どうぞ奥へ奥へ」
言われるがままに店内の一番奥にある4人がけテーブルに誘導される僕。
そして最も奥の角に座らされることに。
僕の右と背後は壁。左にはレスラーで、眼の前には麻生さんと大杉さんという配置。
そこでようやく気づいたんです。
「あ、逃げられない」
【第4章】違法マッサージ店“レディ・ブルー”
「新しく店をオープンすることになってね、そこを取材して欲しいんだ。店長はこいつ」
隣に座る大杉さんの肩を叩く麻生さん。
「基本的に店舗型のマッサージ店なんですけどね、実は最後にコレがあって」
店長の大杉さんはそう言うと、軽く握った拳を上下に動かします。
「“レディ・ブルー（仮名）”ってお店なんですけど、ぜひ雑誌に紹介してもらいたいんですよ」
店長を任されているためかキラキラとした目で話す大杉さん。
要するにこのお店は店舗型マッサージ店を装った手コキ風俗。
風俗店として届け出ていないので完全な違法マッサージ店なんですよ。
風俗雑誌で違法店を紹介することはありますが、具体的な情報は隠して掲載するもの。
やっぱりトラブルに巻き込まれたら面倒ですから。
でも今回のように店名を出して違法店を紹介すると場合、雑誌上の表現がとても難しくなります。
「上と相談したいんですが……」と言いたいところですが、そんなこと言えるわけもありません。
「実際にプレイしてもらった方が早いよね。お店はすぐ近くだからさ」
伝票を掴むとレジへ向かう麻生さん。
そしてサッとドアを開けて僕を誘導するレスラー。
「さあ、どうぞ」
これが一番怖いんだよ……。
それに実際にプレイって？？
【第5章】いざレディ・ブルーへ
アマンドから徒歩数分の雑居ビルの1階。
ドアには峰不二子風のキャラクターが青で描かれています。
「ここがレディ・ブルーね。後は頼むわ！」
そう言うと麻生さんはどこかへ行ってしまいました。
そしてすぐさまドアを開けて僕を誘導するレスラー。
これが逆に怖いんだよ……。
店内は入ってすぐの場所に受付があり、奥にはカーテンで仕切られた個室が3つほど。
その奥にはシャワールームがあるようです。
マッサージ店によくあるレイアウトなので居抜きなのでしょう。
「研修したばかりのRちゃんっていう女の子がいるんで呼びますね」
そう言うとカーテンを少し開けてRちゃんに声をかける大杉さん。
「実際にプレイを体験してくださいよ。どうぞカーテンの奥へ」
「えっ、プレイって？ あ、はい……」
レスラーではなくセルフでカーテンを開ける僕。
そこにはチャイナドレスを着た20代前半のRちゃんがいます。
【第6章】違法プレイによる接待
普段のRちゃんは健全なマッサージ店で働いており、お小遣い稼ぎのためにレディ・ブルーで働くとのこと。
色白の黒髪ボブカットで清潔感のあるタイプです。
話しを聞いてみるとオープニングスタッフはRちゃん含めて3人で全て日本人。
プレイは60分10,000円でマッサージと手コキだそうです。
そして言われるがままにシャワーを浴びて、まずは紙パンツの状態でオイルマッサージスタート。
健全店で働いているだけあってマッサージは本格的です。
全身がほぐされると、Rちゃんの手が紙パンツの中へ。
そのまま紙パンツを脱がされるとローション手コキの始まりです。
さらに乳首まで指先でコリコリされてあえなくフィニッシュ。
「風俗ライターはタダで気持ちいいことしてるんだろ？」
そう思われがちですが実際はそんなことありません。
このミラクルな展開に心の中でガッツポーズをしました。
でも天国はこの一瞬だけだったんです。
【第7章】レスラー！余計なこと言うな！
「ウチはこんな店なんですよ」
プレイ後の僕に笑顔で話す店長の大杉さん。
「あの、手コキがあるのは紹介しちゃマズイですよね……？」
恐る恐る尋ねる僕。
「あ、それはマズイんで“スッキリした”とかいい感じに表現しといてもらえます？」
う～ん、これはなかなかの無茶振り。
「ほら、実際にプレイしたじゃないですか」
ヤバい……。これを言われたら逃げられない……。
「それなら女の子の写真を載せたいんですけど、データってありますか？」
取材用のUSBメモリを取り出す僕。
「ええ、このパソコンに入っているんで」
ノートパソコンを操作する大杉さんですが、明らかに手つきがおぼつかない。
すると横に立っていたレスラーがひとこと。
「そのフォルダに入ってますよ。店長ってパソコン苦手なんですか？」
「い、いや、パソコンってウイルスとかあるだろ？だからあえて避けてるんだ」
険しい表情で苦しい言い訳をする大杉さん。
「ウイルスなんて大丈夫ですよ～」
レスラー！余計なこと言うな！こっちがヒヤヒヤします。
それに、大杉さん！
フォルダをUSBメモリにドラッグ・アンド・ドロップするだけだよ！
そんなことも言えず、ただ大杉さんを見守ることしかできません。
そして10分ほど格闘した後、大杉さんは写真のデータを移すことに成功。
【第8章】しつこい電話と弱腰な編集長
編集部に戻ると早速記事にしなければなりません。
しかし直接的な表現はできないので、“一流のマッサージテクでスッキリ！”などの表現でごまかすことに。
そして翌月になり、刷り上がった風俗雑誌を持って直接レディ・ブルーへ。
「いや～、ありがとうございます！」
受付にいる店長の大杉さんに手渡すとかなりの上機嫌です。
ひと仕事終えた僕も大満足だったんですが、その数日後に大杉さんから電話が。
「来月号なんですけど、またウチを紹介して欲しいんですよ」
さすがに読者に飽きられるので、連続で同じお店を紹介することはできません。
しかし断ろうとすると悪魔のひと言が。
「ほら、実際にプレイしたじゃないですか」
これを言われたら何もできません。
大杉さんから着信がある度にヒヤヒヤする生活が始まりました。
そこでひとまず編集長に相談。
「レディ・ブルーなら載せてOKだよ」
普段は強気な編集長ですが、レディ・ブルーに関しては実に弱腰。
仕方なく毎回紹介することになったんです。
そして半年ほどで大杉さんからの電話は止み、紙面にレディ・ブルーは登場しなくなりました。
【後日談】マッサージ店を再訪すると……
レディ・ブルーのことなどすっかり忘れた数年後。
パソコンのデータを整理していると当時の写真が目に入りました。
そこでふとレディ・ブルーに行ってみたくなったんです。
行動力だけはあるタイプなのでさっそく歌舞伎町へ。
ドアには青で描かれた峰不二子風のキャラクターがまだ残っています。
「ひょっとしたらまだ営業しているのでは!?」恐る恐るドアを開ける僕。
すると受付があった場所には全自動麻雀卓があり、それを囲む4人の強面の男性たち。
僕に気づくと麻雀の手を止め、不思議そうに僕を見つめます。
「す、すいません！間違えました！」
お店はとっくに閉店しており、どうやら仲間内の麻雀部屋として使われていたようです。
閉店が確認できたので、正直ホッとしましたよ。
違法店の紹介はこりごり！
やっぱり違法店って具体的なプレイが紹介できないんですよ。
「お前らのせいで摘発されたらどうするんだ！」とクレームが入る可能性がありますから。
しかも風俗雑誌の場合は編集部の住所も丸わかり。
直接乗り込んで来る可能性もゼロではありません。
今回の経験があるので、未だに違法店や裏風俗の取り扱いはヒヤヒヤしますよ。
でも今は風俗サイトや風俗系YouTuberが違法店をガンガン紹介してますよね？
あれってトラブルにならないんですかね？
この仕事をする上でかなり気になるんですが……。
「ま、大丈夫っしょ！」みたいな感覚なんでしょうね。
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